研究者と市民

 私は研究者である前に、市民でありたいと考えている。
 絶滅危惧植物の保全活動にかかわるのは、研究対象だからではなく、それをやらずにはいられないからだ。

 都庁で働いていたころに、都庁の橋の工事でカワラノギクの大きな個体群が破壊された。結果的に、守ることはできなかったけれど、多摩川自然保護団体の人たちが熱心に交渉してくださった。工事をする側も、それに応えて、調査を入念に行った。私は自分の勤め先の事業だったので何もできなかった。この経験が、自分は職業的な研究者である前に市民でありたいと思わせるのではないかという気がする。

 最近は現実の世界から遠ざかって15年余りが過ぎ、自分の現実的なセンスが鈍っていることを感じることが多い。特に、迅速に行うべきことが、迅速にできないことが多い。もう一度、市民のセンスを取り戻すべく心を入れ替えて努力してみたい。